平成27年10月下旬、豊竹嶋大夫師匠の引退が報道され、その後記者会見も行われた。
嶋師匠については、三味線との不仲がささやかれ、ご本人の体調面に問題はないのに出演できないという噂も流れていた。youtubeの記者会見完全収録版を見れば見るほど、本人は体力を理由にしていないように感じてしまう。
まあ、どういう経緯があったにせよ、人間国宝かつ切場語りの引退は文楽業界には痛手であることに変わりはない。私自身、嶋師匠を見に毎回大阪まで行っていたようなものなので、この錦秋公演はさぼろうと思っていたし、大阪通いは、次回引退公演が最後かもとすら思い始めているくらいだ。
ただ、このサイトとしては、今回の引退というピンチをチャンスに変える方法はないかと考えている。端的にいえば、様々な場面での取り上げ方(メディア露出、商品化等)で、住大夫に比べて格段の差をつけられてきた嶋大夫関連の商品化だ。
だって、住大夫は主なものでもこんなにある。なんで嶋大夫はないんだよと昔から思っていた。
でも商品化ってどうやるのか。
具体的には、文楽協会が持っている膨大な映像資産のうち、嶋大夫公演を切り貼りしてDVDやCDに焼いて売り出してもらえないだろうか。
住大夫⇔嶋大夫
文楽技芸員家系・大阪市出身⇔愛媛県出身
生え抜き⇔いったん退座し会社経営後復座(要するに出戻り)
大夫人生68年⇔大夫人生(退座期間13年を除く)54年
人間国宝期間約25年(入門43年後に認定)⇔人間国宝期間半年弱(出演2公演予定)
日経「私の履歴書」はじめメディア登場多数⇔住太夫の陰に隠れ、露出は少ない
歴史物中心⇔世話物中心
だが、嶋大夫びいきのファンは少なからずいた。
大阪には幕見というのがあり、「ここだけ」を見る、というのはまさに誰を見に行くか、ではないのだろうか。
また、弟子も今現在6人いるとか。おそらく、呂勢大夫とかは別の師匠が亡くなっての預かり弟子だと思うので、人格に問題がある人が合計6人の弟子は持たないと思うんだがな…。
まあいずれにせよ、実力・人気があれば多少のいざこざには目をつぶる大人の度量が、嶋大夫本人も含めて、もう少しほしかったと思う。
最後に。出戻りまでして積み上げた文楽界の業績で、人間国宝まで上り詰めたのは立派。私としては、住大夫の「私の履歴書」より、嶋大夫の伝記を読みたくて仕方がないのだがね。
それを許さない狭量さが文楽界にあるのだとしたら、それこそ文楽の低迷をまねている理由ではないかと思う。