文楽界の現状というか、悲劇の一つに、世の中的に人気がない、集客に難がある、ということは、論を俟たない。
と、いいたいところだが、首都圏に在住し、国立劇場の東京公演を見に行こうとする人間からは、違う意見も出てこよう。
東京公演は、ほんとに座席が取れない。とくに休日は。
そんな声をよく聞く(私の実感でもある)。さらに、実際なんとか平日に休みを取って公演を見に行くと、平日も空席は少ない。
大阪の空席が目立つ現状と比べると、その差は顕著だ。
(大阪も、橋下問題が起きた直後は、連日満席になったとの報道もあったが、平成25年の4月公演では、土日でも空席が目立った)
東京公演での盛況、大阪で空席が目立つ理由は、いろいろ分析されている。
・大阪のほうが公演日数が長く、1回の座席数も多い。
大阪731席、東京560席。公演日数も年間ベースで大阪が東京より30日以上多い。(1公演で5~6日間長いケースもある)
・東京のほうが総人口が(ひいてはファンも)多い。
・大阪は、お笑いなどの現代的芸能が強く、伝統芸能が押されている。
そこでストレートに考えられることは、文楽も東京中心になってしまえば、ということである。
もちろん、技芸員の居住、稽古の拠点は大阪のままでよい(これを変えるのは難しいだろう)。だから、公演は東京の比重をもう少し増やせないか、ということである。
だが、技芸員の移動・滞在の負担もあれば、会場の都合もあろう。日程・規模の拡大は簡単ではないだろうから、まずその前に、東京公演の状況を踏まえた価格面での措置があってもいいように思う。
要するに、一言でいえば、席が取れないほど人気なら、値上げしてもいい、ということだ。
そもそも文楽は、観劇料金としては、安い部類に入るだろう。オペラなどと比べてほしい。1公演(文楽でいえば、「一部」分の時間)で、下手すると数万円にも達する。
しかし文楽は、1日3部制で見ても、2万円はいかない。
オペラが高いのは、かかわる人が多い総合芸術だから、人件費回収のためだ、という説明を聞いたことがある。ならば、文楽も同じではないか。そこが、私が値上げを提案する理由である。
しかも、東京公演を見に行って(あるいは、予約が取れなくて)気になるのが、土日の公演に、平日も時間があると思われる年齢層の方が来ていることだ。平日のほうが少しは余裕があるのだから、平日でも来れる人は平日に予約してくれよ、と正直思ってしまう。忙しい社会人の本音だが、これはいいすぎだろうか?
だが、そんな精神論ではなく、経済学的な道理で、事態を解決することはできる。
そう、だから暴論の1は、東京公演に、土日料金・平日料金の区分を設定し、土日は値上げせよ、という提案である。
個人的には、3時間程度の公演なら8000円程度でもありかとは思うが、さすがに値上げをしすぎると影響が読めないので、とりあえず土日だけ、友の会・あぜくら会割引を廃止するか、さらに400円程度値上げしてみてはどうかと思う。
こうすることで、学生や高齢者は平日に誘導される。また、これによる収益の増加は、すべて技芸員に還元する。これでどうだろう?